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2009.08.09(Sun):素敵SSv
本日も戴きものです!!(すみませんwwww ;><;)

でも、いいの!素敵なSSだから!!


『LOVER'S NAME』 の 榊 伽夜 様 から 50万HIT記念フリーSSを頂いてきました!! 

50万なんてほんとすごいですよね!! 伽夜さん、おめでとうございます!!


伽夜さんにとって今月はさらに嬉しい事があるので(詳しくはブログ『BEADS BLOG~徒然なるままに~』をご覧下さい)、なにかお祝いをしたいと思っているところですが・・・頑張って宿題を片付けたら送ろう!!



とにかく、伽夜様の素敵策士と純情乙女をお楽しみくださいませv


【More...】

突然の報道に、芸能界に……いや、お茶の間に衝撃が走ったある朝。
嫌味なくらいに快晴で風もない、そんな朝のお話。


-50万打記念フリーSS-

【確信犯的犯行】



AM 09:02
突如として流れ出したニュースに、全国津々浦々のお茶の間にスクープという名の荒波が直撃した。
垂れ流し状態の公共電波から発せられるテレビに映っているのは、芸能界一いい男といわれる俳優と無数のカメラマンとリポーター。
息つく間もないほど浴びせられるフラッシュの数が、この男の人気とこのスクープの注目度の高さを物語っている。






朝も早くからなぜこんな状態にあるかというと、ここ数年[抱かれたい男 No.1]に選ばれ続け、主演するドラマでは歴代最高視聴率を弾き出し、某有名な主演男優賞候補としてノミネートされるなど、世間を賑わせているスターにも関わらず、これまで浮いた噂一つなかった男に、ついに色のあるフラグが立てられたのだから仕方がないと言える。今朝発売された週間誌に、とある女性とのツーショットの写真が掲載された。
『芸能界一イイ男 俳優・敦賀蓮 熱愛発覚!』
という、いかにもな見出しと共に。






掲載された写真だが、これは撮影したカメラマンを褒め称えたい程に、敦賀蓮はもちろんの事、お相手の女性もくっきりはっきりと映されていた。
彼が住んでいる超高級マンションから出てくる二人を激写したものだった。
太陽が昇った明るい時間、所謂早朝だった為か、カメラに全く気づくこともなく微笑みを交し合う男女の姿が克明に映し出されていた。
その様はまさに相思相愛という名に相応しく、そして微笑ましいものであり、二人の仲の良さを強調するようにしっかりと手を繋ぎ合っていた写真だった。



















*




















場面は変わって、ここは大手芸能プロダクション・LMEの正面口である。
敦賀蓮所属の事務所前は、無数のカメラとリポーターでごった返しており、出勤する事務所職員にとって迷惑以外の何物でもなくなっていた。
そして、そんな騒動を知ってか知らずか、颯爽と現れたのが当の本人である蓮だった。
初のスキャンダルであるにも関わらず、彼は動揺一つ見せないどころか、本日振舞われている笑顔は常の三倍以上は麗しい。
事務所に問い合わせても「事実関係を確認中です」としか返ってこない回答にいい加減しびれを切らしていた報道陣は、渦中の本人が現れたと同時に次々と質問を投げつけた。






「敦賀さん!今朝発売された週間BOOSTに掲載された内容は事実ですかっ!?」
「一言コメントをくださいっ!」
「この写真の女性は、交際相手ですかっ!?」






矢次早と投げられる質問に足を止め、隣を歩くマネージャーである社が制止するのも構わず、蓮は足を止めてにっこりと最上級の笑顔を浮かべた。その笑顔に呼応するように益々激しくなるカメラのフラッシュと記者達の質問は留まることを知らない。






「この写真の女性とは一体いつからっ!?」
「結婚はお考えなのでしょうかっ!?」
「敦賀さん!何か質問に答えてください!」






蓮は騒ぎ立てる記者を諌めるように、大きな右手をそっとあげる。
「ちょっといいですか」というジェスチャーだ。






「すみません。コメントしたくても、そう一度に質問されると答えようがないのですが……」






笑顔をその端正な顔に貼り付けたまま、蓮は平日早朝に相応しい爽やかな声で告げると、その声に反応した記者達は今度はひっそりと静まり、次の蓮の言葉を待つようにぐっと息を呑みこんだ。
そのタイミングを見計り、蓮は言葉を続けた。






「何から答えれば良いですか?」






逆に言葉丁寧に質問を返され、一瞬動揺を見せた記者達だったが、報道集団の先陣を切っていた蓮の目の前にいる年配の女性リポーターが代表するように一歩前に踏み出し、一冊の雑誌の見開きページを蓮の眼前に突き出した。






「まず、この週間BOOSTに掲載された内容は事実ですか?」
「どれどれ……」






突き出された雑誌を手に取り、掲載された写真と記事に目を通す蓮を静かにじっと見つめながら待つ記者達。
ざわざわとしたざわめきはあるものの、あくまで蓮のコメントを聞くという姿勢だった。






「……随分、はっきりと映ってますねぇ。気がつかなかったな」






雑誌に視線を落としながら、誰に言うともなしに呟いた蓮の言葉に、集まった記者達はごくりと生唾を飲み込んだ。
およそ一分といったところだろうか。
記事を読み終えたらしい蓮は、雑誌に落としていた視線を今度は真っ直ぐ記者に向けて、先程よりもずっと麗しい紳士的な笑顔を浮かべた。






「事実と言えば事実ですね。…………今のところは」






さらりと事実関係を認める発言をする蓮に向かって、一斉にカメラのフラッシュが炸裂し、この様子が生中継されている全国のお茶の間からは悲鳴が轟く。
再び活気付いた記者達は、またもや勢いそのままに質問を繰り出し、にじり寄るように蓮に一歩、また一歩と近づく。
それを身体を張って何とか食い止めようとしている社の顔面は言葉通り蒼白に染まり、今にも貧血を起こして倒れそうだ。






「事実とおっしゃいましたね!?では、敦賀さんはこの女性と交際をしているということで宜しいのでしょうかっ!?」
「この写真の女性ですが、確かタレントの……」






蓮までの距離をぐっと詰めた記者達は、こぞってマイクを彼に向けて畳み掛けるように問う。
獲物を前にした肉食獣の如き圧巻だが、敦賀蓮という男はスキャンダルとは無縁であっても、元来頭の切れる男だ。
故に彼は紳士笑顔を崩すことなく次の言葉を発しようとした。
だが、その時だった。
戦闘機のような轟音と速度で記者とカメラの前に黒い影が滑り込む。
舞い上がった砂埃に視界が茶に染まり、その砂埃の中から人型の影が現れた。






「……っ…はぁ、はぁ……じ、じじじじ、事実じゃありませぇぇええええええええんっ!!!」






恐らくは人間、恐らくは少女。
風によって徐々に鮮明になっていく視界に映ったのは、息を切らし肩で呼吸をしながら、絶叫に近い悲鳴で否定の声をあげる一人の少女だった。
そして、この雑誌に掲載され、敦賀蓮の密会相手として写真に撮られた少女でもあった。






少女は記者達には目もくれずに、その記者やカメラが取り囲んでいる中心にいる蓮の顔をキッと鋭い瞳で睨み上げた。
しかし蓮は、それに対して全く意に介さない柔らかい微笑を少女に向けた。






「おはよう。いいお天気だね」
「おはようございます。えぇ、いいお天気で……って、ちっっがぁーーーーーーうぅっ!!!」






この業界では「挨拶が基本」と目の前の男に叩き込まれているせいか、反射的に少女はにっこり笑顔と可愛らしい声で挨拶の言葉を口にするが、すぐ我に返って首をぶんぶん横に振りながら叫んだ。しかしそんな様子さえも蓮は楽しげに見つめる。






「どうしたの?そんなにおっかない剣幕は、芸能人として……いやそれ以前に女性として好ましくないよ?」
「どうしたもこうしたもありませんっ!!好ましくないのは敦賀さんのその言動ですっ!!!」






あまりに凄まじい般若のような形相の少女を窘めた蓮の言葉を一刀両断するようにばっさり切り捨てる少女。
彼女もまた中々の兵と言えるだろう。






「“敦賀さん”なんて他人行儀な呼び方しちゃって……。どうかしたの?キョーコちゃん」
「な、ななななな、なんでいきなり名前で呼ぶんですかぁあああっ!?」
「なんでも何も……この間、そう言わなかったっけ?俺」






少女の並々ならぬ態度も何のそのとばかりに、さらりとした態度で応じる蓮の顔には、“余裕”の二文字が浮かんでいた。






「た、確かに仰いましたけど、でもそれは二人だけの時って約束じゃありませんでしたっ!?」
「そうだっけ?……それじゃ、最上さん。一体こんなところに来てどうしたの?学校行くって言ってただろう?」
「行った瞬間に私の命は尽きますっ!!全校女子生徒に瞬殺されますっ!!」
「どうして?君、何かしたの??」
「あ、貴方のせいじゃないですかぁぁああああ!!!!!」






毛を逆立たらせて怒る猫のように、唸りながら蓮に詰め寄る少女……その名を最上キョーコ。
この度、目出度くスキャンダルに見舞われた、敦賀蓮の密会相手である写真に映る少女、本人だ。
荒れ狂う台風のように突如現れたキョーコを記者達は唖然として成り行きを見守っていたが、マイクを持ったレポーターの一人が我に返ったらしく、なぜか挙手しつつ怒れる少女に向かって声をかけた。






「京子、さん……ですよね?」
「え?えぇ、はい。京子です。どうも」






これが人気急上昇し、今、最も話題の実力派・若手新鋭女優であり、先月調査された「今注目のタレントは誰?」のランキングナンバーワンに選ばれた“京子”とはとても思えなかった記者は、もう一度京子の姿を確認する。
この記者が疑念を持つのも仕方がないことだった。
記者をはじめとして、一般的に知られている“芸能人・京子”とは、今時珍しく礼儀正しく、竹を割ったような性格でありながら、その親しみやすい愛らしさと抜群の演技力と、役柄によって変貌する外見……そして何より、その天然の明るさと人柄の良さで人気が集まっているタレントであり女優である。
……のだが、今、目の前にいる少女はそのイメージとはかけ離れ、身が竦むほど恐ろしい形相をしていた。
“今にも取って食われる”とは、まさにこの事だと記者は心中で呟きながら、覚悟を決めたようにゴクリと喉を鳴らした。






「京子さん!貴方が現れたということは、やはりこの記事は、敦賀さんがおっしゃったように事実だったと!?」
「つまり、お二人は恋人同士だということですか!?」
「交際発表ということでしょうかっ!?」
「お付き合いはいつからだったのですかっ!?やはり、昨年放映されたDARKMOONの頃からなのでしょうか?」
「交際に至ったまでの経緯をお願いします!」
「出会いはいつだったのでしょうか?」
「この雑誌の写真は早朝のようですが、これは所謂お泊りデートということでしょうか?」
「京子さん!どうか一言を!」






この記者の一言が皮切りになったのか、何をどうする間もなく、次々とカメラのフラッシュを浴びせられ、にじり寄ってくる記者達の叫びに近い質問の矢が降り注ぎ、先程までの勢いは何処かへ消えたらしいキョーコの顔は恐怖に引き攣り、記者の迫力に押されるように一歩、また一歩と後ずさりをした。
まるで対応しきれていない現在のキョーコの顔面蒼白な顔を見た蓮は、向けられるカメラとにじり寄る記者から庇うが如く、彼女の腕を引っ張り自分の背に隠した。






「彼女はこういう事にはまだ不慣れなので、あんまり苛めてあげないでくれませんか?」






にっこりと微笑むその笑顔は、彼お得意の紳士スマイル。
キョーコ曰く、その素敵な笑顔の成分は、嘘と毒と怒りで構成されている。
輝かしい笑顔の筈なのに、何故か寒気を感じて思わず口を結んだ記者達は賢いといえるだろう。






「質問には俺が答えます。それで勘弁してあげて下さい」






そんな蓮の言葉に頷いた記者達は、凍りついていた身体を瞬間的に解凍し、意気揚々とした表情を見せる。
スクープとあらば、火の中、水の中、恐怖の中と駆け抜けてきた猛者達。その切り替えの速さと要領の良さは感服したい。






「先程、敦賀さんがおっしゃった通り、お二人は恋人同士ということで宜しいですか?」
「えぇ、そう思って………」
「だからっ!違うって言ってるじゃないですかぁあああああ!!!敦賀さんもいい加減なこと言わないでくださいっ!!!」






蓮の後ろに隠れていたキョーコは、記者の質問に答えようとする蓮の言葉を遮るように大きな声で叫んだ。
驚いたのは言葉を遮られた蓮ではなく、彼にマイクを向けていた記者の方だった。
蓮は事実を是と答えているのに、その相手であるキョーコは否を唱える。
ようやく話が噛み合わないことに気がついた記者は、もう一度確認するように二人に向かって質問を投げた。






「もう一度確認します。この雑誌に掲載されている記事は事実ですか?」






すると二人は、全く正反対の表情を浮かべた。






「事実ですよ」
「事実じゃありません!」






満面の笑顔でイエスと頷く蓮と、険しい表情でノーと首を振るキョーコ。
記者達はそんな二人にただ混乱した。






「すみません。どっちが正しいのでしょうか?」
「俺です」
「私ですっ!!」






益々混迷していく事態に、もう首を傾げるしかできなくなった記者達を余所に、キョーコは蓮に向かって抗議の目をぐいっと向けた。






「敦賀さん!いい加減にして下さいっ!どうしてそんな嘘をつくんですかっ!?」
「いい加減になんてしないよ。それに、いつ俺が嘘をついた?」
「だから、この雑誌に書かれていることをどうして事実だと言うんですか!?」
「だって事実だろう?ここに映ってるのはどう見たって俺と君じゃないか」






蓮の言い分はある意味では正しい。
確かに掲載されている写真は、真横にしょうが逆さまにしようが、敦賀蓮と京子に間違いはない。






「た、確かに敦賀さんと私ですけど、問題はそこじゃなくて……こ、恋人だの何だのって方ですっ!!」
「だから事実だろう?今は」
「どうして事実なんですか!」






あくまで否を唱えるキョーコの言葉に、蓮はわざとらしく頭を片手で抱えてみせる。
その様子がキョーコの怒りに油を注ぐことになるのだが、どうやら彼には彼なりの言い分があるらしく、視線を彼女に落とし、ぐいっと顔を近づけた。






「もう一度聞くよ?……事実だろう?……今は」
「だからっ……って、え?」






何かが引っかかったように勢いを失ったキョーコは、思案に暮れるように頭を揺らした。
そして、何かに気がついたのか、弾けたように声にならない悲鳴をあげた。






「~~~~~~っ!!!!」
「やっと思い出してくれた?君は俺の恋人だろう?今は」






キョーコの顔は見る見るうちに羞恥の朱に染まり、頭からは湯気が程よく立ち上り始めた。
そんな彼女の様子を見た蓮がクスリと微笑を零したが、ようやく意図が伝わったことに安心したのか、ほうっと息をついた。
キョーコの分かりやすい反応で、記者達はようやく口を挟むチャンスを得て、二人に向かって一斉にマイクを向けた。






「それでは、交際宣言ということで宜しいですか!?」
「それはできません」






すぱっとばっさり一刀両断する蓮に、ようやく真相に辿りついたと思い込んでいた記者一団は、一斉に肩をズリ落とした。






「お二人は恋人同士なんですよね?」
「ええ、そうですよ。今は、ですけど」






何だそれは、という声がそこかしこからあがる。
それはここにいる記者一団だけではなく、この様子を生中継で見ている全国のお茶の間の視聴者達も同じだろう。






「京子さんにも同じ質問をしたいのですが、それは事実ですよね?」
「そうです。……今は、ですけれども」
「今は、……ですか?」






ここまできてようやく二人が強調している言葉に注目が集まった。
恋人同士は事実だという。
だが、それは“今は”らしい。






「今は、とはどういう意味なのでしょうか?」
「それ……」
「それについては、私が説明しますっ!!」






答えようとした蓮の言葉を再び遮ったのはキョーコだった。
びしっと手を真っ直ぐに挙げ、先程の羞恥に満ちた顔とは全く感情の違う真剣な表情をしていた。






「何を言う気?」
「有りのままの事実をです!確かに事実は事実ですけど、本当の意味では、事実じゃないですからね!」






“これ以上、妙な勘繰りをされても困るし、変に誤解されても困りますから”とキョーコが言うと、蓮は“別に言わなくても俺は困らないし、むしろ好都合なのに……”とごねたが、それを素直に受け取るキョーコではなかった。






「順を追ってお話するほど時間もないので、簡潔にお話します」






よく通る高い声には神妙さがあり、これから話される内容が真実であるということを暗に語っていた。
記者達は口を閉ざし、キョーコのコメントを待ち、カメラマンはシャッターを押す機会を伺う。






「先程、こちらの敦賀さんがおっしゃられた通り、この雑誌に書かれている内容は事実と言えば事実です。……が、これは期間限定の関係です。皆様が期待していらっしゃるような正当な関係ではありません」






かなり曖昧な表現なのだが、要は恋人といえば恋人と言えなくもないが、正式な恋人関係ではないということになるのだろう。
キョーコは、記者に向かってコメントを続けた。






「事の始まりは一週間前でした。次のドラマの役柄に悩んでいた私は、俳優として大先輩にあたる敦賀さんにある相談をしました。それは、生まれてこの方、ただの一度も異性とお付き合いをしたことがない私が、主人公の恋人という役を頂き、どう演じるか皆目検討もつかず、アドバイスを頂きたくて彼に相談をしたんです。すると……」






その途端にキョーコの声に震えが混じる。
そして、我慢ならないと言いたげにキッと蓮の顔を睨みつけたキョーコは、何かを噛み締めるように震える声で続けた。






「今思えば、そもそもの間違いはそれでした。どうすれば良いかを相談すると………。こ、この人は、言うに事欠いて………っ!」



















*




















それは一週間前のことだった。
キョーコから相談を持ちかけられた蓮は、事務所の椅子から立ち上がると、キョーコに向かって微笑んだ。






『恋人役ね。そういう事なら習うより慣れろ、が一番』
『は?』
『俺と付き合おうか?』
『は、はいぃぃいいい~~~~っ!?』






素っ頓狂な悲鳴をあげるキョーコに対して、蓮は背景に花が舞っているのではないかと思える程の麗しい笑顔をにっこりと浮かべた。






『だから、俺と恋人同士になりませんか、ってこと』






蓮のこの言葉に、流石のキョーコも瞬間冷凍されたように固まったが、すぐに我に返るとみっともなく取り乱し叫んだ。






『な、なな何を血迷っているんですかぁぁああ!?貴方はっ!!!』
『血迷ってなんかいないよ。俺はいつも正気。言うことは本気』
『だったら普段からおかしいんですね、敦賀さんは』
『……君も大概失礼だよね。俺が恋人だと何か不都合でもあるの?』
『あるに決まっているでしょう!大体、敦賀さんこそ私が恋人じゃ不都合あるでしょうにっ!!』
『ないね、全く。むしろ俺にとっては願ってもないことだし』






ウェルカムとばかりに微笑む蓮に、キョーコはより一層混乱していくばかりだった。






『ああ、多分その様子じゃ聞いてないだろうと思うけど、そのドラマの主演は俺になったから。つまり、君の恋人役。だから、なおのこと遠慮しなくていいよ』
『き、聞いてませんよぉ~~~~っ!陰謀ですかっ?なんで貴方なんです!?』
『陰謀じゃありません。恨むなら俺を主演にと推した脚本家を恨んでね?』
『ぐっ……』
『そうだね。じゃあ、こういうのはどう?』
『何ですか?』






いい案が浮かんだとばかりに、右手の人差し指を立てる蓮を胡乱気な眼差しでキョーコは見つめた。






『期間限定で恋人になろう。ドラマに備えて“恋人”を演じようと言った方が語弊がないかな?』
『恋人のフリをするってことですか?』
『平たく言えばね。ただし、フリだと思うのはナシにしよう』
『何でですか?』
『“フリ”のつもりで演じれば、撮影の時もそれが出てしまうだろう?君の場合、この役を演じきるには、それ相応の努力が必要だろうし』






何と言っても君は愛の欠落者。「ラブミー部員一号だしね」と零すように笑いながら蓮はそう告げた。
一方のキョーコは「貴方は恋愛の“れ”の字も知らない恋愛音痴のくせに」と心で叫びつつも、これで怯むまいと腹を括ったように言葉を続けた。






『フリがナシなら、結局は“本気で思え”ってことじゃないですかっ!?』
『そういうところは察しがいいよね』






気がついて欲しいことには気がつかないのに……と少しだけ苦い笑いを浮かべる蓮に、何の事だか検討もついていないキョーコは、ただ首を傾げるばかりだった。






『無理矢理、君を恋人にするのは俺の本意ではないから、そうだな』






何かを考え込むような素振りを見せ、長い腕を組むこと数十秒。
そうだ、とばかりに笑みながら、キョーコに向かって手を差し出した。






『最上さん、アレ持ってるだろう?』
『はい?アレって何ですか?』
『ラブミー部員の必須携帯品。スタンプ帳』
『あー、はい。持ってますけど……』






こんなものを一体どうするのだろうか、とキョーコは思いつつも、蓮がそれを望むので、持っていたバックの底からハート型の小さいスタンプ帳を取り出し、そのまま差し出した。
スタンプ帳と共に受け取ったペンで、何かを書き込むような所作をする。そして、その書き込んだページをそのまま彼女の眼前に突き出した。
字はヒトを表すとは、よくいったものだ。
彼のその文字は、流れるようなとても綺麗な字だった。






“ラブミー部員1号への依頼
 本日より一週間、俺の恋人になること。
 100点スタンプが貰えるようにがんばってね?

 敦賀蓮”






『任務を無事に完遂したら、100点スタンプを押してあげるよ?』






キュラキュラとしたオーラを纏いながら、いかにも胡散臭い似非笑顔を浮かべる紳士。
キョーコは開いた口が塞がらないとばかりに、口をパクパクとさせ、奪うようにスタンプ帳を取り返した。






『あ、ああああ、貴方ってヒトはぁあああああああ~~~~~~っ!?』






「この似非紳士がっ!!」とばかりに蓮を指差しで絶叫するキョーコ。
全く失礼極まりないのだが、今の彼女の思考を思えばやむ負えない。
そして、仕事には忠実かつ真面目なキョーコは、断る術を完全に封じられてしまい、泣く泣く蓮の依頼を受けることになったのだった。



















*




















「と、言うわけなんです」
「だから、なんでわざわざ言うかな?」






やれやれと演技掛かった呆れ顔を浮かべる蓮に、キョーコのこめかみがピクリと蠢く。






「これで無用な誤解をされて迷惑を被るのは私なんですよっ!第一貴方だって困るじゃないですかっ!?」
「だから何度も言ってるけど、俺は全く困らないから」






終わらない押し問答が続く中、キョーコの話を黙って聞いていた記者の一人が、「あの~」と申し訳なさそうに、やはり挙手をしながら口を挟んだ。






「一週間という約束なら、今日がその期限なのでは………?」
「………………」
「………………」






一瞬にして静まり返る一同。流れる沈黙は一体どのくらいの長さだったのだろうか?
その静寂を破ったのは、他ならぬ紳士スマイルを浮かべたこの男だった。






「確かに今日が期限ですね。それじゃ最上さん、スタンプ帳を出してくれる?」
「へ?………あ、はい!」






反射的に姿勢を正して、キョーコはポケットのスタンプ帳とスタンプを取り出した。
その表情は、ぱぁっと花が咲いたかのように明るい。
これで、ようやくこの一週間の心臓に悪い日々が終わると心が躍ったことが、その表情から見ても分かる。






一体、この男はこの一週間、天然記念物的乙女に何をしたんだか……






と知りたい気持ちもなくはないが、あくまでこの場での出来事しか分からない第三者視点である以上、それを知る術はない事をご理解頂きたい。
だが、相当大変だっただろうということだけはキョーコのこの様子から察する事ができる。。
しかし次の瞬間に、キョーコのほっとしたような表情も、蓮の取り出したスタンプによって、すっかりその色を変えてしまった。






「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと敦賀さんっ!!それマイナス十点のスタンプじゃないですかぁ~~~~!?」






ペタペタと押されていくスタンプ。それは神の如き手さばきで次々と記されていく。






「い、いやぁぁぁああああああっ~~~~!!!一体何個押すつもりですかぁ~~~~!!?」






涙目涙声のキョーコに、情け容赦なく押されていくマイナス十点のスタンプは、とうとうスタンプ帳の一頁を綺麗に埋め尽くしてしまった。
そして蓮は、にっこりと恐ろしい程輝かしい笑顔でキョーコにそれを返す。






「酷ぉぉぉおおおい!酷すぎるぅうううう!!!」






カメラの前だということをすっかり忘れてしまったキョーコは、演技でも見せない号泣の涙を滝の如く流す。
キョーコの手元に戻ったスタンプ帳に押されたマイナス十点は全部で十個だった。
つまりは、マイナス百点満点。
嬉しくも誇らしくも何ともない百点満点だ。






「ちゃんとできなかった君への罰だよ?残念だったね」






蓮はさらりとそう告げると、うぁぁぁわぁぁああああん、とキョーコは泣き出した。
しかし次の瞬間、二人を見守っていた記者達に衝撃が走る。
なんと、泣かした張本人が宥めるという、あまりに非常識かつ異常な光景が繰り広げられたのだ。
だが、それについては誰も何も突っ込まなかった。否、突っ込めなかったと言う方が正しい。






それは、そうだろう。
蓮は、キョーコの目線に合わせて腰を落として、ボロボロと流すキョーコの涙をその指で拭ってやり、頭を優しい手つきで撫でているのだ。
仲の良い兄と妹という言葉がよく似合いそうだったのだが、その評価も次の蓮の行動によってひっくり返された。
優しく撫でていた頭だけを自分の胸近くに引き寄せて、今度は抱きしめるような格好で慰めはじめたからだ。
これでは仲の良い兄と妹ではなく痴話喧嘩後のカップルだ、とその場の誰もがそう思った。
そして、カップルの彼氏役を務めていた男が、甘く囁くような声で語りかけた。
それはまさしく悪魔の囁きと呼ぶに相応しい内容と声色で。






「そんなに泣かないで?大丈夫。まだ挽回できるチャンスはあるから」
「ふえっ……っ?」






しゃくりあげていたキョーコが、浮かべたままの涙目で蓮を見上げた。
男殺しの必殺『「涙目&上目遣い」のコンボだったのだが、その衝動に彼は負けることなく甘い囁きは続けられた。
ちなみに、このキョーコの必殺コンボに瞬殺されたのは、近くにいた男性記者数名と全国津々浦々の思春期真っ盛りの男子達であり、彼らが瞬時に芸能人“京子”の虜になってしまったのは、今更語るまでもない。






「俺が書いた依頼をちゃんと読んだ?」
「え……?」






キョーコは、慌てて蓮が依頼を書き込んだページにもう一度目を落とす。
しかし、そこにはキョーコが最初に見た文面しか書かれていなかったので、キョーコは蓮を見上げながら首を大きく傾げた。






「違う。そのページじゃない。次のページだ」
「え?」






ペラっと一枚捲ってみると、そこには丁寧な文字でこう書かれていた。






“追伸
 100点スタンプが貰えるまでは、この依頼は継続することとする
 がんばろうね、最上さん”






「ふぇぇぇえええええええ~~~~~~~~~~~~~っ!?」






本日何度目になるか分からない、キョーコの驚き混じりの悲鳴が遠慮なく轟く。






「ちゃんと見ておかないとダメだよ?あぁ、ちなみに今書いた訳じゃないからね?スタンプしか押してなかっただろう?」






弁明の論をキョーコに落とすと、蓮はキョーコに向かって素敵な笑顔の花を咲かせた。






「……という訳で、また一週間“俺の恋人”になってね?」
「な、な、な~~~~~~~~~っ!!?」






あっさりと問題発言をする蓮の笑顔と言葉に、一気に顔を紅潮させるキョーコは、わたわたと恥じらいを含めた表情で蓮を見上げる。






「恥らってる君も可愛いけどね。そういうのは二人だけの時にして欲しいな」
「んなっ……信じられません!そういうこと言いますか!?こんな大衆の面前で言いますかっ!?」






更に増した、蓮の神々しい微笑を前に、キョーコはますますその頬を赤く染め上げる。、
蓮はそんなキョーコの肩に手を置き、優雅なエスコートで自分に引き寄せ、その右頬に口付けた。






「~~~~~~~~っ!!!!?こ、このセクハラ似非紳士ぃぃいいいい~~~~~~っ!!!」






予想外の蓮の行動に、すっかり羞恥に身を焦がしたキョーコは、その恥ずかしさのあまり、絶叫しながら事務所の中へと駆け込んで行ってしまった。
真っ赤になりながら走り去ったキョーコの背を見送った蓮は、キリっと姿勢を正して記者達の方へ向き直る。






「ほっぺにキスくらいで逃げちゃうような可愛いコなんですよ、彼女は」






今時珍しいでしょ?、と言わんばかりの男は、これまで見たことがないようなハニかんだ年相応の笑顔を浮かべた。






「早く本当の恋人になれると、俺は嬉しいんですけどね」






恋する男は、ひとつ爆弾を投下する。
まだまだ先は長そうですけどね……、と言いながら一礼をすると、蓮もまた事務所の中へと入って行ってしまった。
キョーコと蓮の姿が消えてから数十秒後、蓮の投下した爆弾に一気にどよめく記者は、その言葉の真意を探るべく何度となく事務所に連絡を試みるが、結局回答を得られることはなかった。






だが






明日の新聞の見出しは、






“人気ナンバーワン俳優・敦賀蓮。人気女優・京子へ白昼堂々の告白!!!”






に間違いはないだろう。






その後、“例の依頼”がどうなったかは、二人のみぞ知る。






Fin


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伽夜さん、ほんとにおめでとうございます!
今度またメールしますねv 

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